現実離れしたリアルとアウトローの夢 漢 a.k.a. GAMI『ヒップホップ・ドリーム』

数年前から高校生ラップ選手権やフリースタイルダンジョンの影響もあってか、日本語ラップがまた注目されてますね。
そんなフリースタイルダンジョンの初代モンスターを務め、ヒップホップ界の重鎮として知られる漢 a.k.a. GAMIによる著書『ヒップホップ・ドリーム』を紹介します。

ラップでお互いをdisり合うMCバトルですが、昨今は上記のように高校生ラップ選手権やフリースタイルダンジョンの盛り上がりによってエンターテイメント的な側面が強くなっています。
しかし、本書ではMCバトルはもちろんのこと、日本のヒップホップシーンがアンダーグラウンドで危険な匂いのするピリピリとした空気感が描かれています。

「こんなことホントに書いちゃっていいの?」ってことまで書かれていてビビりますね。
そしてそれがアウトローな世界を垣間見ているようで非常に面白い。

さらにヒップホップに詳しくなくても、用語の注釈もついているのでわかりやすいし、なにより漢さんの生き様が面白すぎる。
読んでいくと不思議と漢さんのことが好きになっている自分に気づきます。

読書体験として素晴らしいものになっているので少しでも興味があれば読んでみるのをオススメします。

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現実離れしたアウトローな世界

ラッパー・漢 a.k.a. GAMIの初の自伝にして、日本のヒップホップシーンの壮絶なるリアルを描き出す前代未聞のドキュメント。
新宿のストリートで育ったMC漢が見た東京と日本の風景、強者ラッパーたちとの出会いや壮絶なるビーフ、凶暴な不良たちとのヒリヒリする関係、ラップの技術論からストリート・ビジネスとギャングスタ・ラップの真髄、そしてLIBRAとの繰り広げたビーフの最暗部までを赤裸々に語る。
日本社会に蔓延る矛盾を飲み込み、善と悪の彼岸でヒップホップの〈リアル〉を追求する「ヒップホップの哲学」にして、ゼロ年代以降の日本ラップ史に重要な足跡を残す証言多数。ファン必携の書!

冒頭でも書きましたが、「こんなこと書いちゃっていいの?」「これ本当に日本の話?」って感じの話がモリモリ出てきます。
どこのスラム街の話やねんと思ったら中野新橋だの歌舞伎町だのバリバリ日本の地名出てくるのでホントビビりますよマジで。

漢が言うところの『ストリートビジネス』での稼ぎも赤裸々に語られています。
取引の最中で起きたトラブル、一回のビジネスでの稼ぎや月収まで具体的な金額が挙げられているので、本当に裏稼業の世界を覗いている気分になって読んでてドキドキします。
こういう取引って普通に生きている僕らにとってはなかなか知ることができないので、具体的な金額が書かれていると一気に生々しさが増しますね。

とことんリアルを追及するスタイル

本書では何度も「リアルであること」が漢にとってひとつの大きな軸になっていることが描かれています。
それはラッパーとしても人間としても、リアルを重んじるという生き様が漢という一人の男の存在を形成しているのだと実感します。

その「リアルであること」は時に恐ろしくもあり、時にユーモアでもあり、そして時に格好良くも感じます。

本書では漢さんが在籍していたクルーの仲間がMCバトルで「刺す」という言葉を使ったために、実際に相手を刺しに行った時の様子も書かれています。
このへんは読んでて普通にドン引きですけど、いかに漢さんやその仲間が「リアル」を軸として生きているかということを象徴する出来事にもなっていますね。

漢さんはMCバトルにおいても「お前裏でもそういうこと言えるのか?」ということを結構言うんですけど、こういった「リアル」を第一にしている漢さんだからこそ重みの出る言葉でもある。
だからこそMCバトルだから何を言ってもいいわけではないということも今の若手MCに警告しています。

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漢 a.k.a. GAMIの不思議な魅力

ここまで書いてきた内容では漢 a.k.a. GAMIという人は単に怖くてヤバい人のように思えるけど、この本を読み終えると不思議と漢さんのことが好きになっているんですよね。

漢さんは普段の言動やMCバトルでもわかるように、あんなにコワモテなのにお茶目なところがあります。

友達をふざけてブン投げたら頭がカチ割れて気を失ってしまい、抱きかかえてオンオン泣きだすところなんか完全に愛すべきアホで面白いです。
(頭がカチ割れた友達本人からしたらシャレにならないけど)

あと言動はオラオラなのに心の中の声では「それって〇〇ですよね?」「〇〇ですか?」というように何故か敬語になっているのが妙な味を感じさせる文章になっています。
何故か心の中の声だけ敬語になっているのです。完全にお茶目の塊である。

彼が発表した楽曲である『ワルノリデキマッテル』も、曲はカッコいいのにMVは非常にお茶目です。


そういうお茶目なところも彼の魅力のひとつであり、だからこそ仲間に囲まれ、若手のMCにも好かれているんだろうなと思う。
単に怖いだけではこうはならないでしょう。

そんな怖くてお茶目な漢さんにも、世の中に対して考えていることもあり、この本の最後には大きな夢を語っている。
そこでまた僕らはやられてしまうのだ。
「ああ、本当に漢さんが好きだ」と。

リアルを追及するからこそ刺激的な“現実”が描写されており、ヒップホップに詳しくなくても漢さんの生き様が面白すぎる一冊になっています。

最後に『新宿ストリート・ドリーム』という曲を紹介して終わります。
最高にカッコよくて胸にグッとくる曲ですが、本書を読んでこの曲を聴くとさらにグッとくることでしょう。